
ご質問ありがとうございます。AI検索対策をやりたいけれど、上司や経営陣にどう説明すれば予算が通るのかわからない、というご相談をよくいただきます。正直に言うと、これは難しいテーマです。
結論から言うと、KPIを立てて、その先の期待効果をまとめ、プロジェクトとして説明するのが基本です。ただ、AI検索対策は、SEO以上に見込みを立てる材料が少なく、効果を読み切るのは難しいところがあります。そのため弊社は、いきなり大きな予算を取りにいくより、まず「現状把握」のための予算を取る、または既存の予算の中で現状把握から始めることをおすすめしています。
社内で説明するときは、AI検索対策を「何となくやっておいたほうがいいもの」として出すより、KPIと期待効果のあるプロジェクトとして出すほうが通りやすくなります。
KPIの考え方は、AI検索対策の効果とKPIのQ&Aでお話ししたとおりです。自社の名前が挙がってほしい質問で、AIの答えに名前が出る割合(出現率)と順位を直接の数字として見て、その先の指名検索や問い合わせを、間接の効果として見ます。
具体的には、まず、自社が推薦されたい質問を30個ほど洗い出します。たとえば「〇〇の課題をどう解決する?」のような課題相談の質問、「〇〇のおすすめは?」「〇〇と△△の違いは?」のような比較の質問、「〇〇の料金は?」「導入の流れは?」のような導入検討の質問です。並べてみると、だいたい3つほどのカテゴリーに分かれます。
そのカテゴリーごとに、同じ質問をAIに定期的に聞き、月ごと、または週ごとに出現率と、名前が出たときの平均順位を記録します。グラフにすると、どこで効いているか、どこがまだ弱いかが、ひと目でわかります。

図は説明のための例です。「比較」の質問では出現率も順位も大きく上がっていて、「課題相談」の質問はまだ低い、という読み方ができます。社内の報告でも、「次は課題相談の質問に答えるページを増やす」のように、次の手と一緒に説明できます。
AIの答えは聞くたびに変わるので、1回の結果より、同じ質問を何度も聞いた割合で見るのが大事です。測り方は、AI検索対策の効果とKPIのQ&Aや、弊社のAI検索診断でのモニタリングのやり方をもとにしています。
出現率と順位は、それ自体が売上になる数字ではありません。そのため、KPIの先に、指名検索と問い合わせへのつながりを置いて説明します。

AIの答えで名前を見る人が増えると、その一部がAIからサイトに来たり、あとから社名で検索したりします。日本の調査では、AIによる概要ですすめられた会社や商品を、あとから検索することが「よくある」「ときどきある」と答えた人が、合わせて46.1%いました(2025年12月、752人。ナイル調べ/Web担当者Forum)。
この流れをもとにすると、問い合わせがどのくらい増えるかの見込みも、一応は出せます。弊社のご支援先の一例では、AI経由で直接来た問い合わせだけで、全体の10%を超えるプロダクトが出てきました。間接的な分も含めると、この例では2〜3割に及ぶのではないかと見ています。
一方で、正直にお伝えしておきたいこともあります。もちろん、SEOの費用対効果のシミュレーションも、あくまで見込みです。順位は狙いどおりに上がるとは限りませんし、AIによる概要が出る検索では、上位にいてもクリックが大きく減ることがわかってきました(SEOはもう終わりかのQ&A)。それでもSEOには、キーワードごとの検索数という、見込みを立てるための材料があります。
AI検索では、その材料がさらに少なくなります。実際にAIでどんな質問が、どれくらいされているかは、外からはわかりません。海外の専門家のLily Ray氏も、AIでされている質問を全体として追うことは、いまはできないと書いています(Lily Ray)。AIの答えも、聞くたびに、人ごとに変わります。
そのため、問い合わせの見込みは出せても、置く前提が多くなり、幅のある数字になります。「いくら使えば、いくら返ってくる」と言い切るより、前提と幅を添えて出すほうが、実態に合っています。社内で説明するときも、この点は最初に伝えておいたほうが、あとで話がこじれません。
それでも、様子見だけで済ませるのは、おすすめしにくいと考えています。お客さんが会社を選ぶ前の段階で、AIを使う場面が増えてきているからです。
HubSpot Japanが2026年6月に、BtoBの購買に関わる1,573人に聞いた調査では、生成AI・AI検索を使う人の50.3%が、使う目的に「候補となる商品・サービスの洗い出し」を挙げていました(Web担当者Forum)。また、売り手に連絡する人のうち63.5%は、複数の候補を挙げた段階か、それより先に進んでから、初めて連絡していました(コマースピック)。
AIが候補を挙げる場面で自社の名前が出ていなければ、連絡をもらう前の候補に入りにくくなるおそれがあります。どれくらいの影響があるかは、業界や商材によって違い、まだはっきりしたことは言えません。ただ、測らないままでいると、影響があるのかないのかも判断できません。機会損失が出ているかどうかを確かめる意味でも、まず現状を知っておく価値はあると考えています。
AIの答えに挙がる会社の条件は、弊社のホワイトペーパー「AIに選ばれる会社の条件」でも、公開調査と診断のデータをもとに整理しています。社内で説明するときの材料にもお使いください。
そこで弊社がおすすめしているのは、最初の予算を「現状把握のためのリサーチ」に絞ることです。自社が推薦されたい質問で、いまAIにどう答えられているか。競合はどう挙がっているか。どのページが参照されているか。ここを測るだけなら、大きな予算は要りません。
何を、どこまでやるべきかは、会社によってかなり違います。もともとAIによく挙がっている会社もあれば、比較の質問でまったく名前が出ない会社もあります。現状を測ってから決めれば、必要なことに絞った計画を立てられますし、測った数字はそのままKPIの基準値になります。
進め方としては、次の順番が無理のない形だと考えています。
最初から完璧な費用対効果を示そうとすると、なかなか話が進みません。まず現状を知り、その数字で次の判断をする、という順番で社内に説明するのがおすすめです。