文法や漢字の間違いだけでなく、コンテンツを作成する上で注意したいことの一つに、商標単語が挙げられます。商標単語とは、法律によって保護されるべき商標登録された単語のこと。
商品名やサービス名などがこれに当たりますが、実際には商標であるにもかかわらず、一般名詞と勘違いして使われている例が案外少なくありません。そこで今回、間違って使ってしまうと恥ずかしい、一般名詞と思われがちな商標単語を8つピックアップ。正しくはどの言葉を使うべきかとあわせてご紹介します。
目次
一般名詞だと思われがちが登録商標
まずは一般名詞だと勘違いして使われることが多い登録商標から。
宅急便
一般名詞と思われがちな商標単語の代表格ともいえるのがこちら。ヤマト運輸が提供している宅配便サービスの商標です。ヤマト運輸のサービスでない限り、一般名詞である「宅配便」を使う必要があります。
セロテープ
セロファンの片面に接着剤を塗って帯状にカットしたもののことを「セロテープ」と呼んでしまう方は多いはず。ところが、「セロテープ」はテープの総合メーカー、ニチバンによる登録商標です。正しくは「セロハンテープ」となります。
実は海外でも同じことが起こっていて、アメリカや韓国などでは、登録商標である「Scotch(スコッチ)」 の名で呼ばれています。筆者もイタリアに旅行した際、セロハンテープが欲しくて文房具屋に入り、あれこれ説明した挙句、「スコッチのこと?」と言われて肩透かしを食らった経験が!
QRコード
最近よく誤用が見られるのが、こちら。「QRコード」とは、デンソーが発明したマトリックス型二次元コードのこと。「Quick Response」の頭文字をとったもののことを指します。一般名詞として使うのであれば、「認証コード」がよいでしょう。
マジックテープ
よくスニーカーや衣類などに使われている、生地の表面を合わせたりはがしたりすることで着脱できるファスナーのこと。生地に特殊な加工を施すことで、何度でも脱着可能な、まさに魔法のようなテープですが、「マジックテープ」は商標です。
「面ファスナー」とするのが正解ですが、「マジックテープ」が浸透しすぎていて、かえって読者に伝わらない可能性もありそうです。ちなみに、「ベルクロ (Velcro))」も商標です。
キャタピラー
戦車やブルドーザーなどに使われている駆動装置の一部。一般名詞だと思われがちですが、これはアメリカに拠点を置くキャタピラー社の登録商標です。「無限軌道」というのが正しいのですが、「マジックテープ」と同じく、かえって伝わりにくいように思われます。補完説明が必要ですが、どう簡潔に説明するかにライターの腕が問われそう。
一般名詞がわからず…つい使ってしまいがちな登録商標も
登録商標だと知りながらも、便利に使ってしまっているものを集めました。大事な場面で、「ついうっかり」がないよう注意してください。
チャッカマン
火をつけるときに便利なあれです。「チャッカマン」といえばほぼほぼ伝わるので、ついそういいたくなってしまいますが、これは日本の大手ライターメーカー、株式会社東海の登録商標です。
これといって決まった一般名詞はなく、「ガスマッチ」「着火ライター」「点火棒」などと言い換えらえれることが多いようです。
ウォシュレット
日本人であればおそらく誰もが知っているTOTOの登録商標。そうとはわかっているのですが、「温水洗浄便座」 では伝わりにくいため、「ウォシュレット」といいたくなります。
それにしても、「ウォッシュ+トイレット」を組み合わせ、商品の特徴をうまく表現しつつ語呂もいい、見事なネーミングというほかありません。
ちなみに、業界シェア2位のLIXILでは「シャワートイレ」と呼んでいます。
シャチハタ
これも日本ではおなじみの商品。「シヤチハタ」が企業の名前であることはおそらく誰もが知っているはずですが、おそらく商品のあまりのオリジナル性の高さが理由で、商品を企業の名前で呼んでしまっている例です。
一般名詞は「浸透印」。「印鑑」とは完全に区別されており、さまざまな契約の場面で、 「シヤチハタ」では受理されないケースがほとんど。これだけ便利に使っておいて「シャチハタは不可」もないと思います、つくづく。
正しい言葉を使うのがライターの使命
商標単語を誤用してしまうと、ライターや編集者として恥をかいてしまうだけでなく、より大きな問題に加担してしまうことにもなりかねません。大きな問題とはすなわち、商標の普通名称化です。
商標が普通名詞化してしまうと、本来もっていたはずの商標としての機能が失われてしまい、商品やサービスに適用したとしても、顧客を吸引する力をまったくといっていいほど発揮することができません。「ホームシアター」「魔法瓶」「エスカレーター」「うどんすき」「巨峰」などがその例です。
Webライティングの多くは、広い意味で広告としての役割を帯びています。つまい、本来、商品やサービスを売ることが目的であるにもかかわらず、期せずして商品の魅力を減じてしまっているわけです。
そうしたねじれを生じさせないためにも、言葉は正しく使いたいですね。