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Growth Hackは死んだのか?スマホ勃興期に起きた「異変」を振り返る

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公開日:2021-02-06
更新日:2021-02-19
執筆者:佐藤大貴

アースダイバー代表の佐藤です。
今後、アースダイバーのマーケターや編集者、ライターでブログを不定期更新していきます。

第1回目はいきなりマニアックですが、「Growth Hackは死んだのか?」というお題で日頃考えていることを記事にしてみようと思います。

Growth Hackという言葉を知ったブログ

さて、私がはじめてグロースハックという言葉を知ったのは、2015年、IT企業へ転職し、上司からおすすめされた「Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す」(2014)という本がきっかけでした。

この本は海外のベンチャー・キャピタリストによる著書なのですが、翻訳をしていたのは、当時ファッションアプリ「IQON」を運営していたVASILYでした(創業者の金山さんは現在ZOZOテクノロジーズの代表)。

この本を出したVASILYが「Growth Hack blog」というブログを運営しており、そこでグロースハックという言葉を知りました。こちらのブログの最初の記事が、2013年7月のようなので、少なくとも、彼らはその時から「グロースハック」という手法に注目していたことがわかります。

言葉の由来や定義の前に、まずは当時グロースハックという言葉が、少なくとも自分の周囲(自分が観測しえたIT界隈)でどのように用いられていたか、について振り返ってみます。

Growth Hackをどのように当時捉えていたか

私の当時のGrowthhackの認識は大きく2点で、

①「そもそも改善を超高速で回す仕組み」
②「レバレッジポイントの発見と集中投資」

でした。

①「そもそも改善を超高速で回す仕組み」
まずはデータですね。大量のデータをオンタイムで取得・モニタリングする環境を構築し、テストとなる施策を多変量テストし、効果を出す。また別の検証を一気に進め…というものです。

②「レバレッジポイントの発見と集中投資」
こちらは商売の原理原則かと思いますが、上記①で効果のよかった施策に集中投資するというものです。たとえば、メディアで「東京駅でおすすめしたいお土産10選」のような記事のDAU効率が高ければ、お土産カテゴリの記事制作に集中投資する、簡単にいえばそういうことです。

どちらも理に適った、事業を成長させるドライバーという感じがしますね。
また、2010年代前半は、Gunosyなどのニュースキュレーションアプリが台頭し、個人の嗜好に最適化したリコメンドエンジンが誕生していくなど、人ではなく「機械学習がGrowth hackを促進する」ような状況も生まれていました。

もともと、Growthhackという言葉はDropboxの創業期マーケター:ショーン・ハリスらの施策をさして、2010年ごろに言われるようになったものだそうです。
具体的には、スタートアップに必要な成長のコアとなる部分を数値に基づいたテストで徹底的に行うことであるということなので、①②の自分の認識とは大きく相違はないと感じています。しかし、「スタートアップに必要な成長のコアとなる部分」が

・プロダクトに向かっているのか
・マーケティングチャネルに向かっているのか

と、2種類のGrowthhackが存在していたと思っています。そして、後者である「マーケティングチャネルのGrowthhackは死んだのではないか?」という話がこの記事でのテーマになります。

スマートフォンはT型フォード登場以来の衝撃

2010年〜2015年ごろ、どのような時期だったかと思い返すと、スマートフォンの普及が恐ろしいスピードで進んでいった時期でした。田端信太郎が2012年に書いた「メディアメイカーズ」という著書で、1920年代のアメリカでT型フォード(自動車)が普及したスピードと同じかそれ以上の勢いで、スマートフォンが流通していったことを指して、大変な情報革命が起きているということが書かれていました。
以下赤字の折れ線グラフが、2010〜2018年におけるスマートフォンの保有率推移を表したものです(総務省 情報通信機器の保有状況より引用)。

スマートフォンが登場したことで、人々の検索体験が変わるだけでなく、Facebook、TwitterなどSNSが台頭しはじめたことにより、かつてより即時性の高いコミュニケーションがスマホを通じて行なわれるよう、変化しました。
つまり、Google(スマホ版)や各種SNSを一気に多くのユーザーが利用し始めるようになり、行動データの学習やアルゴリズムの整備も進みきっていない時代でありました。
今ではインフラとも言えるプラットフォームが、未成熟だった時代です。

アルゴリズムの隙をついて、恐ろしく安いCPAでユーザー集客が実現できてしまっていたり、情報の真偽が怪しい記事でも、Googleのアルゴリズムの隙をついて検索結果上位に表示させることができてしまっていたり。

「そもそも改善を超高速で回す仕組み」「レバレッジポイントの発見と集中投資」ーーつまり最適化ーーを繰り返せば繰り返すほど、低コストで品質の低い広告や記事などがプラットフォーム上に拡散されていた時代だったといえます。

これが、マーケティングにおけるGrowthhackの本質であったと感じます。
しかしながら、Googleはじめ、アルゴリズムのチューニングや整備が進んでいき、2021年となる現在。各種プラットフォームは「成熟化」していき、そのようにhackできる余地は少なくなってきたように感じます。
広告CPAも当然高騰しましたし、検索結果上をみても、公的機関サイトやオフィシャルサイトなどが優遇されるアルゴリズムに変わり、小手先の手法で事業を一気に伸ばすということは難しくなってきたのです。

そもそも、WEBマーケティング手法だけでどうにかするということ自体が通用しませんし、プロダクト/サービスが市場においてどのようなポディションを取るべきなのか?といった、上流工程(商品設計)からマーケティングを捉え直す必要があります。

ものすごく当たり前の話なのですが、2010年〜2016年ごろは、そうした本来のマーケティング手法が忘れられ、手前・手先のhackを行なうことがマーケティングであるかのような時代でもあったなぁと思う次第です。

ですので、いまだにマーケティングの話しかしないマーケティング支援会社はちょっと危険だと思います。当社では、サービスの詳細なヒアリング/市場におけるポディショニング再策定からきっちりやらせていただくことを、モットーとしていますし、そうした会社が世の中にもっと増えればいいなぁと思っています。

1回目からいきなり昔話をしちゃいました。

この記事の執筆者

アースダイバー株式会社・代表取締役CEO。出版社勤務→DeNA→人材ベンチャーでIPOを経て、2019年当社を創業。コンテンツマーケティングの世界を、より良いものにしたいと考えています。 2022年から、子ども向けの教育事業もやっています。

EARTHDIVER.Inc