ECサイトやメールマガジンをはじめとして、相変わらず我々は文章で情報を受け取ったり、情報を発信したりしています。
そんななかで、読みにくさを感じたり、稚拙に感じてしまったり、といった文章を目にすることはないでしょうか。
文章に違和感があると、その後の成約に結びつかなかったり、内容の信憑性が損なわれたりして、不利益になることもあります。
ですが、その文章の主はワザと読みにくい文章にしたわけではありません。そのほとんどが、ライティングのノウハウを知らないことが原因なのです。
ライティングには、「こうしたほうが良い」というノウハウがあります。このノウハウとは、文章を生業にしているライター、作家、編集者、校閲・校正たちが、“読みやすさ・伝わりやすさ”を重視し、長年かけて積み上げてきた経験則の集合です。
この記事では、そんな知っておくと文章が少し良くなる手法や心得をお伝えします。
まずは「どの語をひらがなにし、どの語を漢字にするか」についてです。
目次
閉じひらきの概念を知ろう
編集用語では、文章において特定の文言を漢字にすることを「閉じる」、ひらがなにすることを「ひらく」と呼びます。
・漢字のほうが読みやすい言葉、ひらがなのほうが読みやすい言葉がある
・閉じひらきにも気を配って文章を書く
まずは、上記2点を意識することから初めてみましょう。
ひらがなを意識的に多く使おう
漢字が多くなると、文章の読みにくさが生まれてしまいます。だいたい、ひらがな7~8割に対して漢字2~3割のバランスがいいとされています。
また、スマホやPCでのライティングは変換で必要以上に漢字を使ってしまう傾向があるので、基本的には「ひらがなを意識的に使う」ように考えると良いでしょう。
違和感の気づき方:手書きだったら? で読み直す
簡単に閉じひらきの違和感を判断できる、基本的・初歩的なチェック方法をお伝えします。
「手書きの文章だったら、この漢字は書いていたか」と考えてみましょう。
私も上記を実践しています。怪しい漢字は、画面を見ずに紙に書き出してみてもいいでしょう。
知らない常用外漢字も、難読漢字も、スマホやPCでは簡単に漢字に変換できてしまいます。そのため、自分が読む際には違和感を覚える漢字表現を、自分が書く際には多用してしまうのです。
画数や点の個数を忘れて漢字を書けない、ということはあると思いますが、それはただ単に漢字を忘れてしまっただけなので、問題ありません。
ですが「そもそもどんな漢字だったか思い出せない」なら、それは閉じることがあまり推奨されない漢字の可能性があります。該当箇所はひらがなにしたほうが無難でしょう。
常用外の漢字や当て字はひらく
常用外漢字は、基本的にひらがなにしたほうが良いです。また、思った以上に当て字が使われているのですが、当て字もひらがなにしたほうが良いでしょう。
それらの漢字は、「変換できるが、読みにくい漢字」の筆頭です。読みにくさや、読んでいる最中の「詰まり」の原因になってしまうので、ひらきましょう。
×漢字(閉じ) | 〇ひらがな(ひらき) | |
---|---|---|
繋ぐ | → | つなぐ |
我儘 | → | わがまま |
此れ/是 | → | これ |
其れ | → | それ |
兎に角 | → | とにかく |
出来る | → | できる |
予め | → | あらかじめ |
全て | → | すべて |
宜しくお願い致します | → | よろしくお願いいたします |
有り難う御座います | → | ありがとうございます |
~下さい | → | ~ください |
上記は一例です。気になったら、「常用漢字 〇〇」で検索してみましょう。
使い方次第で閉じひらきが変わることもある
漢字単位で閉じひらきを覚えておけばいいかと言うと、そうでもありません。
例えば、先ほど例に示した「予め→あらかじめ」についてです。
常用漢字として「予(ヨ)」はあるため、予想、予算など「ヨ」として使う場合は漢字が適しています。ですが「予め(あらかじめ)」という訓読みは、常用漢字に記されていません。だから、「あらかじめ」はひらくことが妥当なのです。
このように、漢字単位ではなく、使い方で閉じひらきを判断するようにしましょう。
複数の意味をもつ漢字は使い分けを覚えておこう
英語では、「have」と「take」が多くの意味合いをもっています。同様に、日本語にも多くの意味合いやニュアンスをもつ単語があります。
私は、上記英単語に相当する日本語は「もつ」と「とる」だと考えています。特に「とる」は同音異字の漢字も種類が多く、そのニュアンスや意味合いもいくつもあります。
これらの言葉は、使い方によって閉じひらきを変えたほうが、読みやすくなることが多いです。
幸いなことに、つまずきやすい漢字はだいたい決まっており、それほど膨大ではありません。あらかじめ、何種類か自分のなかで暗記しておくとスムーズに書けるはずです。
以下に閉じひらきで話題になる言葉と使う場面の一例を示しています。
物……物体、物質。実体があって、さわれる物に対して。
者……人、人物に対して。
もの……「そういうもの」「というもの」のような、「もの」という単語事体は意味をもっていない場合。形式名詞的に使う場合。
モノ……雰囲気や概念。神霊妖魔や触れられないモノ。あるいは、対象物を強調したいとき。
中……物理的に存在する物に対して、別の物体がその内側にある場合。
なか……「〇〇のなかでは、これが一番!」など、物理的な物ではない場合。概念や、集合のなかの一部であることを表すとき。
作る……工作など、図工的で少し小規模なハンドメイドな物を作るとき。
造る……構造物や建築物など、土木工事的な大きな物を造るとき。
創る……「新しい仕組みの創造」「世界の創生」など、大仰なものを創るとき。
つくる……制作や創作など、多少アーティスティックなものをつくるとき。
時……「何時何分」と時刻で示す場合。または「何分後」など、時間経過が重要なとき。時刻を示すとき。
とき……「〇〇したとき」など、その瞬間であることが重要であるとき。形式名詞的な使い方のとき。
刻……あまりビジネスライティングでは使わない。常用外だが、誌的に強調したい際などに。
言う……発言者が明確にわかる、または発言者が重要であるとき。
いう……発言者が不明確なときや、伝聞のとき。「一般的には〇〇といわれています」というような使い方。
持つ……物理的にそれを所持しているときや、所持できる物に対して。
もつ……物理的ではない場合。性質がある、概念が備わっているなど。
上記は一例、かつ私が個人的に決めている統一表記であるため「これだけが正しい」というわけではありません。
ですが上記で挙げた例は、メディアルールや社内ルールの統一表記内で言及されることが多い、「つまずきやすい言葉」であるのは間違いないでしょう。
それほど難しいものでもないので、最初は表にして張り出すなどして参照していれば、いずれ暗記していることに気づく瞬間があります。
そうなってくると、ずいぶんラクに閉じひらきを判断できるようになります。
すでに統一表記があるなら、そちらを優先しよう
今回挙げた閉じひらきは一例ですが、よくあるメディアルールや社内の統一表記で採用されやすい単語と裁定を選んだつもりです。そのまま使っても、それほど間違いではないでしょう。
ですが覚えておきたいのは、「これが絶対」ということはなく、案件ごとに決まっているルールのほうが優先される、ということです。
該当の案件・メディア・企業ルールに統一表記がなければ、そのときは自分自身の閉じひらきルールを参照しましょう。
閉じひらきを初めとして、統一表記を決めるのは以下を達成するためです。
【1】案件・メディア・企業のサイトなど、媒体全体で表記統一がなされていること。
【2】記事内の表記で統一がなされていること。
優先度は1、2の順番であることを覚えておきましょう。
最後に
- まずは、閉じひらきという概念を意識しよう。
- 「その漢字を書けるか」でチェックしてみよう。
- 難しい漢字や当て字はひらくことが多い。
- つまずく漢字は決まっているので、それだけでも覚えておこう。
- 案件に統一表記があるなら、それに従おう。
漢字にするかひらがなにするか、言ってみればそれだけのことです。ですが、それだけの点に注意を払うだけで、各段に読みやすい文章に変えることもできます。
まずは、閉じひらきの概念を認識すること。次に、実際に文章中で意識して「ひらいて」みること。そうすれば、自然と使いこなせるようになっていきます。
気になった方は、ぜひ実践してみてください。
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